自作アルコールストーブ、グルーブストーブの火力制限に関する推測。謎のスリーテン公式。
グルーブストーブのりるびわ~くす氏が、アルコールストーブの火力調整についてとても興味深い実験結果をブログで公開されていましたので、早速、スタディしてみました。
グルーブストーブの燃焼性質
グルーブストーブに限りませんが、鍋を直置きするタイプのアルコールストーブは鍋の温度に敏感です。SiSOがよく製作しているグルーブストーブも最初は炎が小さく、お湯が沸騰してくると炎が大きくなってきます。
あまりいい作例ではないのですが、ウコン缶サイズのグルーブストーブです。点火直後は炎が小さいです。
これが水温40℃を越えた辺りからだんだん炎が大きくなってきます。
以前からこの理由についていろいろ考えていたのですが、恐らく、常温で気化している分に加え、自分の炎で熱せられたアルコールがさらに気化しようとするのですが、冷たい鍋のせいで温度が下がって思うように気化できていないんでしょう。
で、鍋の温度が40℃ぐらいになると、スリット付近は炎のおかげでもう少し高い温度に達して(メタノールは64.7℃が沸点)沸騰状態になり、気化が促進されて徐々に炎も強くなるということではないかと考えています。
気温がそこそこ高ければ、特に何もせずに火力が上がっていってくれますが、ちょっと気温が低い(=水温も低い)ときはなかなか炎が安定しません。初期状態から火力を得るためには、針金などで少しグルーブストーブと鍋の間に隙間を設けてやる必要があります。
お湯を沸かすだけであれば、最終的な最大火力が大きくても問題ありませんが、調理をしようとすると少々使いにくいところでもあります。
グルーブストーブの最大火力を抑制するスリーテン公式?
さてさて、りるびわ~くす氏のブログから察するに、「最大火力になってしまうところを制限して、ほどよい火力に抑える」公式と見ました。こちらのブログ記事から、53mm径グルーブストーブと66mm径の缶を組み合わせることで火力抑制しているようです。
アルコールは空気が無いと燃えない
アルコールに限りませんが、結局、アルコールにしろ何にしろ、空気中の酸素と化合して燃焼するためには空気(酸素)が必要です。大きく燃え上がるアルコールストーブの炎を見て「おお、良く燃えているな!」なんて最初は思っていたのですが、良く考えてみると、あれって燃えているのは表面だけということになります。
言い方を変えると、大きな炎が出ているということは、それだけゆっくり燃焼しているとも言えます。カセットガスのように、短い炎でしっかり燃焼してくれる方が、バーナーとしては高性能と言えるでしょう。
本題に戻りますが、スリーテン公式によって得られる火力抑制のプロセスは、以下のような流れではないかと推測します。
- 燃焼開始時は通常のグルーブストーブとして燃焼を行う。
- 最大火力になるところでガスが外側缶内を満たす。
- グルーブストーブ本体に空気が届かなくなる。
- 結果的にグルーブストーブからが炎が離れて外側缶端で燃焼する。
- アルコールの気化量が抑制され火力も抑制される。
イラストで説明するとこんな感じです。左が燃焼初期、右が最大火力時です。
簡単だし作って試してみました
ということで、手元の空き缶でちょっと作ってみました。グルーブストーブは、以前製作したウコン缶サイズのものがあったのでそれを使用しました。外側の缶は内側のグルーブストーブが安定して置けるよう、底が平らなものを使っています。
グルーブストーブ最大火力抑制実験
ということで、概ね予想通りになったので写真で紹介します。
まずは点火してちょっと経ったぐらいです。水温は32℃で、グルーブストーブは通常燃焼状態です。
水温が40℃近くなってくると、炎がグルーブストーブから出たり外側缶から出たりするようになってきました。アルコールの気化量が増えて、外側缶の内部を満たし始めたようです。
水温48℃でほぼ外缶燃焼に移行しました。
このまま沸騰まで(写真は90℃のところです)安定して外缶燃焼し続けてくれました。
今回の実験はグルーブストーブ45mm缶、外側は66mm缶なので、53mm缶で作ったグルーブストーブを使うと振る舞いが若干異なるかもしれませんが、大筋、こんな理屈かな?と思います。
もしかして、外側缶の下の方に調整可能な空気穴を設けたら火力調整できるかも。でも、もろに外側缶内部で燃焼する可能性もあるのでアルミ缶だと溶けちゃうかな?
今日の一言二言三言
アルミ缶 アルコールストーブで 再利用
自作アルコールストーブ、火を扱うということでいろいろと注意することが多いですが、あまりお金もかからず、研究の余地が一杯あって楽しい趣味です。
空き缶でアルコールストーブ(コンロ)自作のまとめ。
空き缶でアルコールストーブが作れる!と知って試しにサイドバーナータイプを作ってみたら、しっかり炎が出てちょっと感激。以来、あれこれ妄想を加えながら楽しく改良しています。何しろ材料が空き缶ですから、懐にもやさしくていいですね! |
SiSOさん、ごぶさたです。
早速のご紹介ありがとうございます。
SiSOさんもご存じだと思いますが、
アルコールストーブは近傍の構造物と熱的に結合し、
一体化した巨大な燃焼系として動作することがあります。
個人的に一体化燃焼・結合燃焼と呼んでいます。
たいていは暴走と言う名の結果をもたらすことになります。
今回はこの一体化燃焼(つまり外缶燃焼です)を、
積極的に活用した意欲作です。
これまでのアルコールストーブの常識ではあり得ない、
クッカーや鍋やポットの大きさに関係なく、
ほぼ一定した火力で安定燃焼します。
理屈は自分自身もまだ確立できていませんが、
SiSOさん説なかなか説得力ありますので、
参考にさせて頂きます。
外缶燃焼状態になると、
グルーブストーブ本体は、
アルコールストーブではなくて、
アルコール蒸気ジェネレーターとして、
機能する所が非常に面白いです。
お察しの通り外缶に空気穴を開け、
穴の大きさで火力調整ができます。
グルーブの突出し量による、
なんちゃって火力調整ではなく、
マジで本格的な火力調整ができます。
騙されたと思ってお試し下さい。